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2005年12月26日 (月)

サポティスタ対談(第5回)

※この原稿は、2005年12月26日に 「速報!サッカー24」にアップされた記事の再掲です。


言葉を持ったゴール裏(サポティスタ/岡田康宏)


 鹿島アントラーズの総合サポーターサイト「TORCIDA12(トルシーダ・ドーゼ)」が開設され、私設応援団IN.FIGHT(インファイト)代表の河津亨氏がブログを始めたのは、2005年の3月だった。


 河津氏がネットで発信する情報や問題提起は、鹿島だけでなく、他のクラブのサポーターも注目するものとなっている。「サイトを始めた理由」「サポーターが言葉を持つことの意味」について、河津氏に話を聞いた。


◆サポーターのほうが上
河津:04年10月23日の浦和戦で、鹿島サポーターが投げ込んだペットボトルを選手が投げ返し、怒ったサポーターがピッチに乱入する事件がありました。


 俺は、ああいう事件が起こる可能性を分かっていたし、クラブ側にも伝えていた。選手、クラブとサポーターの関係がうまくいってなければ、こういう事件は当然起こり得るからです。


 本来、クラブとサポーターとの関係は、サポーターのほうが圧倒的に上。客商売ですから、お客さんが上に立つのは当たり前のことです。また、スポンサーがクラブにお金を出すのは、お客さんがいるから。だから、サポーターはスポンサーよりも上。クラブはサポーターが楽しめるスタジアム作りをするべきだし、選手はサポーターを満足させるプレーをするべきなんです。俺たちの2000円は「血の2000円」ですよ。


 ところが鹿島では、「サポーターがクラブの下」という関係がいつの間にかでき上がっていた。選手もクラブも、サポーターの言うことを聞かない。サポーターは主張を通せないから、フラストレーションがたまる。事件が起こったのは、その結果です。


◆ネットの世界も悪くない
 原因はクラブの怠慢にあります。クラブが、選手とサポーターとの間に壁を作り関係をガードしてしまった。選手もクラブもサポーターとのコミュニケーションが取れなくなり、三者の関係が上手くいかなくなった。クラブは、自分たちがどういうクラブなのかを忘れて、「自分たちだけでやっていける」と誤解した。全盛期のヴェルディみたいなものですよね。だから、事件が起きたのは「三方が悪いから」だと思うのだけれど、サポーターはそれを説明する言葉を持たなかった。結果として、あの事件でも「悪いのはサポーター」ということになってしまう。ネットで情報を発信しようと思ったのは、それが一つのきっかけです。


事件が起きたときに、俺はある一つのサイトでだけはコメントを付けていたんです。そこは信頼できる人が集まっているサイトだったので、そこにいる人たちとは対話をしていた。最初は何十人という人から書き込みがあって、なかなか噛み合なかったんだけれど、話をしていくうちに人も減ってきて、お互いの考えていることがちゃんと通じるようになっていった。


 そのとき「ネットの世界も悪くないな」と思ったんです。会うことができないから、回りくどい部分はある。だけど、何千人何万人を相手にするなら、こういうツールで根気よく続けていくのも“あり"だな、と。


◆バラバラだった意見が一つに
 サイトを始めた効果は絶大なものがありました。


 今までは、クラブがサポーターの声を聞くとしても、どんな声を聞いてよいか分からなかった。IN.FIGHTは大きなグループなので、総意を集めることが難しいんですよ。だけど、多くのサポーターの集まるサイトができたことで、バラバラだった意見を一つに集約できるようになった。これは、大きなメリットですね。


 また、サポーター同士の連絡ツールとしても最高です。“パッ"とみんなに広まる。今後は、もっと具体的なメッセージを伝えることにも使えると思うんですよね。例えば「こんな応援のスタイルでいくよ」とか、「こんな試合見てられない、前半で帰っちゃおう」「全員で後ろを向こう」とかね(笑)。


 それから、クラブと対等に話せるようになった部分もあります。今は、自分たちのサイトをスポンサーが見ている。だから、クラブも気にせざるをえない。鹿島がサポーターに支持されていないとなれば、サイトを見たスポンサーは広告を出す意味を考え直すかもしれない。そうなれば、クラブはサポーターの声を聞くようになる。当たり前のことなんですけどね。


 クラブとのやり取りを公開していることも大事です。これによって、自分たちやクラブが何を考え、どんなやり取りが行われているのか、多くのサポーターが共有できるようになるので。


◆行動を引き出すための情報
 ネットでの情報発信するようになって、こんなに早く情報が広がるとは思わなかった。もっと早く目線を向けるべきだったな、という気もするくらいです。


これまでは、ネットの世界で言われていることと現実とのギャップをすごく感じていたから、ネットの世界とゴール裏の世界をリンクさせて考えていなかったんです。ネットには、非現実的な意見がたくさんあるんですよ。「スタジアムに来てないんじゃないの」って思うような。ただ、やってみて分かったんだけど、ネットを「現場に来る人たちが見るもの」という前提のもとに使えば、ものすごい便利な情報ツールだなって気付いたんです。


 今までゴール裏は、徹底した現場主義だった。ゴール裏で問題提起して、ゴール裏で集まって、ゴール裏で解決する。ところが、その状態が長く続いたことで閉鎖的になってしまった。ネットでは情報が先に行くけど、ゴール裏は行動が先に来るから。


 でも、ネットでの情報が「行動を引き出すための情報」であるなら、それはお互いにとって悪いものではないんだよね。今までゴール裏の住人たちは、言葉がなく、行動しかなかった。それが言葉を持てるようになるとすれば、ネットはすごくいいツールになる可能性がありますよね。


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